2022/03/24 今年度修了生(スポーツ理学療法学・生体機能評価学)のご報告

R3年度をもちまして,以下の者が学位を取得しました.
写真は谷口教授と大学院生,学部生になります.

○齋藤佑平

学位:修士(理学療法学)

研究テーマ
「異なる股関節屈曲角度における股関節外転ストレッチングが長内転筋の筋スティフネスに与える影響」

要約:鼠径部痛の主原因であるとされる内転筋群損傷は,サッカーのキック動作や方向転換動作時の受傷が多く,長内転筋の損傷頻度が高いことが報告されています.筋損傷は筋柔軟性低下が関連するとされていますが,長内転筋を対象とする効果的なストレッチング法は確立されていません.股関節外転ストレッチング時の股関節屈曲角度が長内転筋の弾性率に及ぼす影響を明らかにすることで,筋スティフネスを低下させる効果的な肢位を検討する知見の一つとなると考えました.本研究は健常若年男性を対象とし,異なる屈曲角度条件における股関節外転ストレッチング効果を検討するため,屈曲80°条件,伸展10°条件でストレッチングを行いました.本研究結果より、異なる股関節屈曲角度での外転ストレッチングにおいて,屈曲80°条件では,長内転筋のせん断弾性率の低下を認めなかった一方,伸展10°条件ではせん断弾性率が外転30°と40°で有意に低下しました.したがって,長内転筋の筋スティフネスを低下させるためには,最大外転に伸展を加えたストレッチングが効果的であることが示唆されます.

○横山 祐

学位:修士(理学療法学)

研究テーマ
「胸郭可動域訓練が胸郭可動性および呼吸筋スティフネスに及ぼす影響」

要約:これまで、胸郭可動域訓練が呼吸筋スティフネスに及ぼす影響は胸郭可動性の評価から推定されるのみでした。本研究では胸郭可動域訓練が呼吸筋スティフネスに及ぼす影響を超音波エラストグラフィを用いて評価し、胸郭可動域訓練は呼吸筋スティフネスを減少させる可能性を定量的に示しました。

○加藤拓也

学位:博士(理学療法学)

研究テーマ
「剪断波エラストグラフィを用いた長内転筋の受動張力評価の妥当性検証および股関節角度変化に伴う弾性特性の定量化- Thiel法固定献体およびヒト生体による検討 -」

要約:長内転筋は、股関節内転筋群の中で最も損傷頻度が高く、サッカーキック動作や方向転換動作で受傷するとされている。しかしながら、筋損傷の一因となる股関節角度変化に伴って生じる長内転筋への受動張力は不明であり、損傷メカニズムは明らかとされていなかった。本研究は、Thiel法固定献体を対象として剪断波エラストグラフィ法により計測された長内転筋の弾性率と受動張力との関係を検証した上で、ヒト生体を対象とし、股関節角度変化が長内転筋の受動的な弾性特性に及ぼす影響を検証した。本研究結果より、長内転筋の弾性率と受動張力との間には有意な強い線形関係を認め(R2 = 0.982 – 0.989, P < 0.01)、剪断波エラストグラフィを用いた長内転筋の弾性定量により、筋伸長に伴って生じる受動張力の変化を推定評価できる可能性が示された。また、長内転筋の受動張力は屈曲角度に依存し、外転に伴う増大は伸展位にて大きく、さらに伸展位においては内旋に伴い増大することが示された。これらの知見は、長内転筋の損傷メカニズム解明に寄与する基盤情報となる。 研究室の集合写真