本研究は,Thiel法固定献体を対象に,大腿二頭筋長頭(BFlh),半腱様筋(ST),半膜様筋(SM)の弾性率と受動張力の関係を明らかにすることを目的としました.その結果,弾性率と受動張力の関係は,いずれの筋および部位においても有意な強い線形関係を示しました (BFlh; R2= 0.995~0.996,ST; R2= 0.970~0.995,SM; R2 = 0.996~0.998).さらに,弾性増加率の傾きは,SMよりもBFlhおよびSTの方で大きくなる結果が得られましたが,筋長および解剖学的断面積による正規化後,筋肉間で有意差はありませんでした.これらのことから,超音波せん断波エラストグラフィを用いたハムストリングス各筋の弾性率の定量により,筋伸長に伴う力学的ストレスを推定評価できる可能性が示されました.また,弾性増加率の傾きは骨格筋の形態特性を反映することも示唆されました.